国際的映画ファンドの節税効果を否認
カテゴリ:01.法人税, 07.国際税務 裁決・判例
作成日:03/31/1999  提供元:21C・TFフォーラム



 不動産業を営むX社(原告)は、米国で制作された映画フィルムを購入してそれを全世界に配給する米国のA社にリースすることを事業目的とする民法上の任意組織であるB組合(組合員数7社)に出資し、そこで生じる損失(主に、映画の減価償却費と支払利子)のうちX社の持分をX社の他の黒字所得と合算し節税効果を得ていたが、税務署はその節税効果を否認し更正処分を行っていた。
 税務署の主張は、映画の耐用年数の短さ(2年)を利用し、投資の初期段階で多額の損金を計上し課税所得の圧縮を図るスキームであるという認定であった。これに対し、(1)X社はこのような取引は米国において確立されたものであり、減価償却が認められることは当然である、また(2)B組合における他の組合員6社は更正されておらず平等取扱原則に違反すると主張し、大阪地裁で争われていたが、このほど、映画フィルムの減価償却費計上を否認する判決が下された。
 この判決では、X社は不動産業を営む会社であり、映画フィルムに係る減価償却費の計上等により生ずる課税上の利益を得ることを目的として、単に資金の提供のみを行う意思のもとにB組合に参加したものであり、B組合を通して当該映画フィルムを所有し、その使用収益等を行う意思は有していなかったものと推認するのが相当であるとして、税務署の処分が適法であると結論づけられた。また、X社だけが更正処分されたことについても、それだけでは差別的な取扱いがあったとは言えないとX社の主張を斥けている。