元理事長が横領した金員に係る源泉税の納税告知処分を否定
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:01/20/2003  提供元:21C・TFフォーラム



 社会福祉法人の代表者(元理事長)が同法人から横領によって得た金銭に対して、原処分庁が元理事長に対する賞与と認定、源泉所得税の納税告知処分、不納付加算税賦課決定処分をしたことの適否が争われた事件で、京都地裁(八木良一裁判長)は社会福祉法人が元理事長に支払ったものと認めることは無理と判断、原処分を全て取り消す判決を下した。

 この事件は、特別養護老人ホームの設置経営等の社会福祉事業を営む社会福祉法人の元理事長が同法人の会計から取得した金員を原処分庁が元理事長に対する賞与と認定、同法人に対して源泉所得税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分をしたことが発端になったもの。そこで、原告の社会福祉法人が、その金員は判決でも確定したように元理事長に横領されたもので給与所得にはあたらないと反論、処分の取消しを求めて提訴したわけだ。これに対して、原処分庁は元理事長が法人の資産に対する全面的な支配権を有し、法人側も金員の移動を容認していたこと、さらに給与所得に当たるか否かは刑法上の横領か否かではなく、租税法上の見地から検討されるべきで、横領によって取得したものであっても給与所得の性質は何ら失われないと反論、原告の取消請求の棄却を求めていた。

 判決はまず、所得税法28条1項が定める給与所得の趣旨を解釈。その上で、元理事長の所得として課税の対象になることは明らかでも、そのことから源泉所得税の源泉徴収の対象になる給与や賞与の支払いがあったといえる否かは更に検討が必要であることからも、横領の被害者である社会福祉法人に対して源泉徴収義務があることを前提にした原処分は不当な結論であると判示、納税者の主張を全面的に認容する判決を下している。

(2002.09.20 京都地裁判決、平成11年(行ウ)第27号)