記帳担当者の仮装行為は請求人の指示によるものと認定
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:12/28/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 帳簿の記帳を委託された者が行った仮装行為が、審査請求人の指示や依頼によるものか否かの認定が争われた事案で、国税不服審判所は記帳担当者が現金、預貯金の出入れに一切関与しておらず、架空計上の利益も請求人が受けるものであることから、記帳担当者の架空計上は請求人の指示・依頼に基づくものであると認定、審査請求を棄却した。

 この事案は、内科医院を営む審査請求人から記帳や決算種類の作成を依頼された者等が行った仕入れ等の架空計上に基づく過少申告に対して、重加算税を課すことができるか否かが争われていたもの。
つまり、請求人から振替伝票、総勘定元帳、試算表の作成など病院経営に係る帳簿の作成を委託された者が決算後、合計残高試算表を作成して総勘定元帳と一緒に税理士に目を通してもらうとともに確定申告書・青色決算書を作成してもらった上で、請求人の確認、押印を得てから税務署に提出していたという事案だ。そこで請求人は、帳簿の記帳を委託した者に仮装行為の事実はなく、それを容易に発見できる専門的知識もないから請求人の行為と同視すべきではないと主張、原処分の取消しを求めていた。

 これに対して裁決は、記帳担当者が現金や預貯金の出入れに一切関与していないこと、仕入れ等の架空計上による利益は請求人のみが受けるものであること、年々減少していた請求人の収入金額が一転して増額に転じた年があることなどから考えると、記帳担当者は請求人の指示・依頼に基づいて架空計上を行っていたことが認められると認定。結局、請求人自体が国税通則法68条1項に定める「事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装」したということができると指摘、審査請求を棄却している。

(国税不服審判所、2003.11.25裁決)