課税処分取消訴訟続行中に公売手続の停止を求めることも妥当
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:01/29/2008  提供元:21C・TFフォーラム



 法人名義で行われた取引が個人に帰属するものか否かの課税処分の取消訴訟が続行中に、公売手続の停止を求めることが可能か否かの判定が争われた事案で、横浜地裁(河村吉晃裁判長)は公売の結果、行政事件訴訟法上の事後的な金銭賠償だけでは償い切れない損害が発生すると指摘、公売手続の続行の停止を求めることも妥当とする判決を下している。

 この事件は、有限会社名義で行われていた中古自動車の販売等に係る所得・売上げが個人に帰属するものと認定され、所得税・消費税の更正処分がされるとともに、滞納処分が実行されたことから課税処分の取消しを求める訴訟の提起に併せて、公売手続きの続行の停止を求めていたというもの。

 納税者は、公売に供された物件は納税者とその家族の自宅であり、公売によって転居を余儀なくされるのは重大な経済的、精神的な損害を被るから、公売手続の続行を停止することについて、重大な損害を避けるため緊急の必要があると主張、公売手続きの停止を求めていた。これに対して原処分庁は、課税処分に違法はなく、当然に重大な損害を避けるため緊急の必要がある時には該当しないと反論、納税者の主張の棄却を求めていたという事案だ。

 判決はまず、課税処分と滞納処分は別個の処分ではあるが、滞納処分は課税処分の続行手続としての性質を帯びたものと指摘。その結果、課税処分の取消訴訟を提起していればその課税処分に係る国税の滞納を原因とする滞納処分の続行の停止を求めることも許されると解釈。また、公売物件は納税者にとって強い愛着のある物件であり、公売されれば行政事件訴訟法25条2項の「重大な損害」が生じるものとも指摘、公売手続きの続行の停止を命じる判決を下している。

(07.04.25横浜地裁判決、平成18年(行ウ)第21号)