委任契約の破棄に税務職員の違法行為は認められないと棄却
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:06/08/2004  提供元:21C・TFフォーラム



 税務委任契約の破棄は税務職員の税務調査時の違法な行為による税務代理権の侵害によるものと主張、国に損害賠償を請求した事件で、神戸地裁(田中澄夫裁判長)は税務職員に違法な行為は認められないと認定、税理士の請求を棄却する判決を下した。

 この事件は、税務委任契約を締結している法人と税理士が遠方にあったことがトラブルの発端になったもの。そこで、税務職員がそうした事情を知りながらも事前通知のない税務調査を行った、調査の際に税理士の代理権を無視する発言を行った、調査に不当に踏み切った、調査理由を開示しなかった、関与先に脅迫的な言辞を行ったことを理由に、破棄された顧問料の7割相当額、信用毀損に伴う非財産的損害の併せて700万円弱の賠償金を国家賠償法1条1項に基づいて請求していた事案だ。当然、こうした事案では事実認定に比重が置かれるため、国側は税理士側の主張をすべて否定、違法がないと反論した。

 これに対して判決は事実関係を調査した上で、まず、事前通知のない調査については税務調査や現状確認が行われなかったのであるから、そもそも違法を主張する理由がないことになるから、税理士の代理権を無視したような発言も認められないと指摘。また、調査の不当な打切りについては、税理士が税務調査の現場をビデオ撮影しようとしたことを理由にあげ、守秘義務のある国家公務員であれば調査自体を打ち切る行為に出ることも是認できると示唆した。

 さらに、調査理由の開示が法律上、税務調査の一律の要件とはされておらず、金額の確認以外に調査内容を開示する必要も認められないと指摘して納税者の主張をことごとく否定する一方で、委任契約の破棄は青色申告取消しや更正処分等に伴う多額の税金の追加納付に主たる原因があったと示唆して棄却している。税理士は控訴中だ。

(2004.02.26 神戸地裁判決、平成11年(ワ)第2274号)