現実の支配が移転した時期が引渡しのあった日と判示して棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/11/2014  提供元:21C・TFフォーラム



 土地の売買代金及び残地補償金に係る収益の益金算入の計上時期の判断が争われた事件で、東京地裁(八木一洋裁判長)は、引渡しの日が明確でない場合は売買取引に関する諸事情を考慮し、現実に支配が移転した時期をもって引渡しの日と判断するのが相当であると解釈、これに反する法人側の主張は受け入れられないと判示して棄却した。

 この事件は、不動産の賃貸や金銭の貸付等を営む合資会社が、都市計画事業のために買い取られた土地の対価、買取りに伴う残置補償金を当期の益金として算入して申告したところ、原処分庁が売買代金等の収益は前期の事業年度の益金に算入すべきであると申告内容を否認、更正処分等をしてきたのが発端となった。

 そこで法人側が、土地の各売買契約書における引渡時期が明らかに当期となっているにもかかわらず、売買契約の締結年月日及び移転登記日、証明書の日付けが前期であることを理由に引渡しが前期にあったと認定するのは都側との合意に反するという考えから、原処分の取消しを求めて提訴したという事件である。

 しかし判決は、平成5年の最高裁判決をもとに、収益はその実現があった時つまり収入の原因たる権利が確定した時に属する事業年度の益金に算入するのが法人税法22条4項の趣旨に適うと解釈。その上で、外見上、引渡日や収益の実現した日が必ずしも明らかでない場合もあると指摘。そうした場合は、契約上、買主に所有権がいつ移転するかということだけでなく、代金の支払いに関する約定の内容、実際の支払状況、登記関係書類や建物の鍵等の引渡状況、危険負担の移転時期、不動産から生ずる果実の収受権や不動産に係る経費の負担の売主から買主への移転時期、所有権の移転登記の時期等の取引に関する諸事情を考慮して、不動産の現実の支配がいつ移転したかを判断し、現実の支配が移転した時期をもって引渡しがあった日と判断するのが相当と判示した。結局、法人側の主張はこれらの考えにすべて反するものであると指摘して、その主張を斥けている。

(2014.01.27東京地裁判決、平成24年(行ウ)第549号)