出向の合意の存在がない、出向対価の損金算入を否定
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:02/10/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 生命保険の代理業を営む子会社から、決算書類等の調製受託等を行う親会社に役員等の出向対価として支払われたた金員が寄附金に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(内野俊夫裁判長)は、外形的に出向先と出向元の役員等を兼任している場合と何ら異なることなく、出向の合意も認められないと認定、寄附金に該当すると判示して訴えを棄却した。

 この事件は、生保関連の業務を行う子法人の代表者が、親法人から役員の出向を受けたとして、親法人に役員報酬相当額を支払い、それを損金に算入して申告したのが発端。これに対して原処分庁が出向の対価は寄附金に該当すると申告内容を否認、法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、子法人がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 つまり、子法人が親法人に支払った出向対価が寄附金に該当するのか、役員報酬相当額に該当するのか、つまり損金算入が可能か否かが争点になったものだ。子法人側は、中小企業間では口頭による契約の締結も多く、出向に関する契約書等が存在しないことだけを理由に、出向が存在しないものと見なすべきではないと主張して、取消しを求めたわけだ。

 しかし判決は、法人税法が定める寄附金の趣旨に触れ、贈与又は無償の供与か否かは通常の経済取引として是認できる合理的な理由が存在しないか否かで判断されると指摘するとともに、出向の意義、給与の支給方法、実際の負担形態等の意義についても解釈。その解釈にそって、出向者が出向元事業者の業務に従事しないことを踏まえれば、外形的には出向先事業者と出向元事業者の役員等を兼任している場合と何ら異ならないと認定した。しかも、出向に関する契約書を交わすのが通常であるものの締結されておらず、出向の合意の存在が認められないから、出向の対価として支払われたものとみることはできないと判示して棄却している。

(2015.02.20東京地裁判決、平成24年(行ウ)第664号)