相続税の還付金相当額の損害賠償は免責条項の適用外と判示
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:03/30/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 法定期限までに相続税の更正の請求手続きをしなかったために、依頼者に還付金相当額の損害賠償金を支払ったことが税賠保険の免責条項に該当するか否かが争われた控訴審で、東京高裁(房村精一裁判長)は保険契約の縮小填補条項の適用を認めて原審判決を変更、原審が認めた請求額を一部下回る額の支払いを損保会社に命じる判決を言い渡した。

 この事件は、依頼者から相続税の更正の請求手続きの依頼を受けた税理士が、法定期限までにその手続きをしなかったために、手続きをしていれば還付を受けることができた相続税相当額の損害賠償金を依頼者に支払ったことを受け、保険契約に基づき一請求当たりの填補限度額の範囲内で保険金1000万円及び遅延損害金の請求をしたことが発端になったもの。

 しかし損保会社が、依頼者の相続税の納付が法定申告期限後であり、過少申告に伴う修正申告をしていたことを理由に、保険契約に規定された免責条項に該当するとして支払いを拒否したため、税理士がその支払いを求めて提訴したところ、原審の東京地裁が還付金相当額の損害賠償は免責条項には当たらないと判断、税理士の主張を全部認容する判決を下したため損保会社が控訴していたという事案だ。

 つまり原審は、期限後納付又は過少申告がなされ、納税者が本来納付すべき税額と当初の納税額との差額について、税理士が納税者に支払いをしたような場合に免責条項が適用されると解釈したわけだ。

 これに対して控訴審も、原審と同様に免責条項の適用を否定したものの、本税相当額の支払いではなく、還付を受けられなかった税額相当額の賠償をしたのであるから、本税の納税手続きに問題がある場合を定めた免責条項の問題ではないと指摘。その上で、保険契約の縮小填補条項の適用を認めて原判決を変更、税理士の請求額を857万円余及びその遅延損害金の支払いを求める限度で認容する判決を言い渡している(損保会社が上告)。

(2009.01.29 東京高裁判決、平成20年(ネ)第3980号)