海外の関連会社の新株発行の引受けは有利発行と判示、棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:06/28/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 海外の関連会社が発行した新株を額面価額で引き受けたことが有利発行有価証券に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(小林宏司裁判長)は、増資によってそれまでの内国法人と海外の関連会社間における株主としての経済的な衡平が維持されなくなったのは明らかであると判示して、内国法人側の請求を斥ける判決を言い渡した。

 この事件は、海外の関連会社が発行した新株を内国法人が額面価額で引き受け、その払込金額を引き受けた株式の取得価額に計上して法人税の確定申告をしたところ、原処分庁が新株発行は有利発行有価証券に該当し、株式の取得価額と払込価額との差額は受贈益として益金算入すべきであると判断、法人税の増額更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたことが発端。そこで内国法人側が原処分の一部取消しを求めて提訴したという事案である。

 内国法人側は、内国法人が有する株式と内国法人以外の株主が有する株式は譲渡制限、買取保証及び配当受領権の内容が異なるため、内国法人以外の株主が増資によって損害が生ずることはなく、内国法人以外の株主から内国法人に移転する経済的利益も存在しないのであるから有利発行有価証券には該当しないという主張を展開した。

 判決は、増額更正処分に至る認定判断過程と内国法人側の主張を整理した上で、株式の取得価額と払込価額を比較して有利発行有価証券に該当するとしたことの適否、有利発行有価証券でないとすべき事情の有無について検討した上で、株式の取得価額と払込金額の差額が10%相当額以上であるから、原処分庁が有利発行有価証券に該当すると判断したのであり、その判断過程は合理的であると認定した。

 加えて、内国法人が有する株式と内国法人以外の株主の有する株式が内容の異なる株式に当たるとは言えないことから、有利発行有証券か否かは株式が平等に与えられたどうかを踏まえて判断すべきと指摘した。結局、増資によって株主間の経済的な衡平が維持されなくなったのは明らかであるから、有利発行有価証券に当たるとの判断は左右されないと判示、棄却している。

(2015.09.29東京地裁判決、平成25年(行ウ)第822号)