子会社への債権放棄に相当な理由が認められないと判示して棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:12/15/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 輸出入売買等を行う法人による子会社への売掛金等債権の複数回にわたる債権放棄が法人税法上の寄附金に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(舘内比佐志裁判長)は、業績不振等の子会社等の倒産防止のためにやむを得ず行われたものとはいえず、また合理的な再建計画に基づくものであるともいえないと指摘して、法人側の主張を棄却した。

 この事件は、一般商品の輸出入売買等を営む法人が子会社に有していた売掛金債権を各事業年において複数回にわたって債権放棄(債務免除)したことを踏まえ、貸倒損失として法人税の申告をしたところ、原処分庁が債権放棄の額を寄附金と認定、寄附金に係る損金算入限度額を超える部分の損金算入を否認した上で法人税等の更正処分等をしてきたため、法人側がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 当然ながら法人側は、各債権放棄が損失負担の必要性の有無及び再建計画の合理性に係るいずれの要件も満たしているから寄附金の額には該当しないと主張して、原処分の取消しを求めたわけだ。

 しかし判決は、法人税37条、法人税基本通達の寄附金に係る取扱いに触れた上で、債権放棄をした場合に損金算入が認められるのは債権放棄に経済的合理性があり、業績不振による倒産防止のために行った場合など、客観的に見て法人の収益を生み出すのに必要な費用性が明白であると認められる場合に限られると解釈するとともに、債権放棄の相手方との間に資本関係、取引関係、人的関係、資金関係等の関係が存する場合があるときと指摘した。

 こうした解釈の下に事実関係を整理した上で、損失負担の必要性、再建計画の合理性(再建計画の有無及びその内容、債権放棄の額、さらに子会社に対する再建管理)等を判断。その結果、各債権放棄は、業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものとはいえず、また合理的な再建計画に基づくものであるともいえないため、各債権放棄に相当な理由があるということはできないと判示して、法人側の主張を棄却している。

(2015.04.24東京地裁判決、平成24年(行ウ)第847号)