納税者の過失相殺を認めたものの、税理士の相続人に多額の賠償命令
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:04/16/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 一審の途中で死亡した税理士に対する損害賠償請求訴訟で東京高裁(三輪和夫裁判長)は、海外資産に関する確認や調査を怠った点について税理士側の債務不履行を認める一方で、依頼者(納税者側)にも過失相殺の対象となる相応の過失があったと認定して、原審が命じた損害賠償額を一部減額、7400万円余の賠償金と遅延損害金の支払いを命じた。

 この事件は、相続税の修正申告に伴い重加算税、過少申告加算税、延滞税を賦課されたのは、税理士が海外資産の申告は不要と誤った指示をするとともに、被相続人保有の株式数等を正確に把握せずに申告した一方で、依頼者の不利な時期に契約を解除したためと主張して、債務不履行等を理由に税理士側に損害賠償を求めた事案。

 一審の東京地裁は税理士側の債務不履行を認定して1億円を優に超える損害賠償を命じたが、税理士が一審の途中で亡くなったことから、税理士の相続人が訴訟を承継、原審判決の取消しを求めて控訴したわけだ。控訴審で税理士側は、海外資産の申告に関する善管注意義務違反があったとしても、重加算税等の賦課との間には相当因果関係はないという反論を展開した。
 
 これに対して判決は、海外資産に関する確認や調査を怠った点には債務不履行を認定したものの、株式に関する申告については債務不履行の存在を否定、委任契約の解除にも依頼者側の不利な時期に解除したとはいえないと判断した。というのも、法人税の申告書以外に株主構成を明らかにした客観的な資料の存在を窺わせる証拠がなく、止むを得ない措置であったという判断からだ。

 また、相続人が海外資産の存在を伝達していれば、税理士が海外資産の確認や調査を指導していた可能性が相当程度以上に存在し、申告の隠蔽を是正することができたとも指摘。結局、依頼者側にも重加算税を賦課され、配偶者軽減特例を適用できなかったことに相応の過失があったという判断をして、原審が命じた損害賠償額を3割程度削減、7400万円余の支払いを命じる判決を言い渡した。

(東京高裁平成25年1月24日判決、平成24年(ネ)第1377号)