顧問税理士等に告知義務違反による不法行為を認定
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:08/03/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 雨漏りなどの瑕疵があることを告知しないでマンションの売買契約の仲介をした銀行や顧問税理士等に対して、告知義務違反を理由に顧問先が損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁(岡光民雄裁判長)は原告の主張を全面的に認め、2億円を超える損害賠償金の支払いを命じた。顧問税理士等は判決の結果を不服として控訴中だが、担当の弁護士によればいずれ和解の方向に進むものとみられている。
 この事件は、A顧問先にB顧問先所有のマンションの購入を勧める一方で、A顧問先が所有する土地を税理士自らが購入する契約を交わしていたという事案。税理士の勧めで購入したマンションはある写真誌でも紹介されたように、雨漏りがひどかったことから、購入した顧問先が損害賠償の支払いを求めていたもの。つまり、税理士が売買契約の仲介役を果たしながら、雨漏りを知っていたにもかかわらずそれを説明しなかったのは告知義務違反になると主張、損害賠償請求の訴訟を提起していたわけだ。当然、税理士サイドは雨漏りの事実を認識していなかったと反論、原告の主張を全面的に否定していた。
 これに対して、東京地裁は税理士サイドが雨漏りの状況等を認識していたと認定するとともに、契約交渉を主導した仲介者的地位にあったことなどを指摘して、原告の主張を全面的に支持。その上で、入手した情報を顧問先に告知しなかったのは告知義務違反にあたると判示、顧問先サイドの主張通り、税理士等に2億円を超える損害賠償の支払いを求める判決を下した。税理士の顧問先に対する責任と倫理が問われた判決といえる。
(1998.5.13東京地裁判決、平成6年(ワ)第25417号)