相続分を超える財産の取得は第三者への利益処分と判示
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:12/22/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 遺産分割協議によって相続分を超える財産を取得した者が、同じ遺産分割協議によって相続分に満たない財産を相続した共同相続人の滞納に係る第二次納税義務を負うか否かの解釈が争われてきた事件で最高裁(甲斐中辰夫裁判長)は、第二次納税義務を定めた国税徴収法39条の第三者に利益を与える処分に該当すると判断、第二次納税義務の納付告知処分の取消しを求めていた上告人の主張を斥けた。

 この事件は、遺産分割協議によりその相続分を超える財産を取得した相続人の一人が、同じ遺産分割協議によってその相続分に満たない財産を取得した共同相続人が抱える滞納に係る国税について第二次納税義務の納付告知処分を受けたことからその取消しを求めて提訴したものの、一審、二審ともその主張を斥けたため、上告していた事案だ。

 つまり課税当局側は、国税を滞納していた共同相続人が滞納に係る国税の徴収を免れるために、上告人に多くの財産を取得させることを意図したことが、国税徴収法39条が定める第三者に利益を与える処分に該当すると認定、第二次納税義務の納付告知処分をしたわけだ。

 これに対して上告審は、国税の滞納者を含む共同相続人間で成立した遺産分割協議が、滞納者である相続人にその相続分に満たない財産を取得させ、他の相続人にその相続分を超える財産を取得させるものであるときは、国税徴収法39条が定める第三者に利益を与える処分に当たると解釈、上告人の主張を棄却した。加えて最高裁は、滞納者に詐害の意思があることは第二次納税義務の成立要件ではないとも判示している。第二次納税義務の解釈に新しい判断を下した判例となった。

(2009.12.10最高裁第一小法廷判決、平成20年(行ヒ)第177号)