農業所得標準に基づく推計課税は妥当と判示
カテゴリ:02.所得税 裁決・判例
作成日:10/25/1999  提供元:21C・TFフォーラム



 農業所得標準率に基づいて推計で事業所得を算出したことの是非が争われていた事件で、長野地裁(針塚遵裁判長)は農業所得標準率に基づく推計課税は一応の合理性があると判示、10年近く続いた争いにピリオドが打たれた。
 この事件は、給与所得を有するとともに農業を営む納税者が白色申告の方式で総所得金額を記載した確定申告を提出したことが発端になったもの。これに対して、原処分庁が税務調査の後、いわゆる農業所得標準を用いた推計の方法による農業所得分を算出して更正、過少申告加算税の賦課決定処分をしたため、その取消しを求めて争われていた事件だ。
 納税者は、違法な税務調査と課税手続きによって精神的苦痛を受け、かつ弁護士費用の負担を余儀なくされたと主張、課税処分の取消しと損害賠償を請求していた。
 しかし、長野地裁は調査の協力が期待できなかったのであるから独自の税務調査に基づいて課税処分に至ったことはやむを得ないと判断。また、農業所得標準に基づく推計課税も実際の所得に近似した数値を算出する上で、一応最良の方法と認められると判示、納税者が求めていた課税処分取消請求、損害賠償請求を全面的に棄却した。
 農業所得標準は、農業所得金額を収支実額で算出できない納税者のために、各税務署管内の市町村が組織した農業所得標準協議会や税務協議会等が毎年作成しているもので、この標準率で申告した者に対しては更正しないというのが一般的な慣行になっている。類似の事案は山形地裁でも判決が下りているが、こちらは控訴してその是非が争われている。
(1999.6.18長野地裁判決、平成2年(行ワ)第1号課税処分取消等請求事件)