一身専属性を有する慰謝料請求権の差押えは違法と裁決
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:09/30/2003  提供元:21C・TFフォーラム



 原処分庁が差し押さえた損害賠償請求権が差押禁止財産に当たるか否かが争われた事案で、国税不服審判所は差押時点において未だ行使上の一身専属性が失われたとはいえないと判断、債権の差押処分を全部取り消す裁決を下した。

 この事案は、原処分庁が滞納国税(贈与税)を徴収するため、審査請求人が加害者に求めていた「貞操の侵害に伴う精神的苦痛に対する慰謝料請求権」を判決言渡しの日に差し押さえたことが発端になったもの。そこで審査請求人が、損害賠償請求権は請求人のみが受領すべき一身専属的なもので相続も譲渡もできない権利であり、民事執行法152条が定める差押禁止債権に該当し、かつ将来債権であって差押時点においては不確定な要素であると主張、差押えの取消しを求めたもの。当然、原処分庁は、判決言渡しの日に差し押えたのであるから差押禁止財産には当たらないと反論、審査請求の棄却を求めていた。

 審判所は、貞操を侵害されたことを理由にした慰謝料請求権は、被害者がその行使をする意思を表示しただけで未だ具体的な金額が当事者間において客観的に確定しておらず、その請求意思を貫くかどうかは被害者の自立的判断に委ねられているのが相当であり、なお行使上の一身専属性を有するものと判断、被害者(審査請求人)の債権者(原処分庁)はこれを差押えの対象とすることはできないと解釈。

 このため、審査請求人が求めていた慰謝料請求権は、加害者が控訴した後に裁判上の和解がされているから、差押処分の時点においては行使上の一身専属性が失われたとはいえないことから、差押えの対象とすることはできないと判断、原処分を全部取り消す裁決を下した。

(国税不服審判所、20002.02.08裁決)