税制選択上の過誤でも保険は免責されないと最高裁が判断
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:08/12/2003  提供元:21C・TFフォーラム



税理士が簡易課税制度選択適用届出書の提出の有無を怠り、不適用届出書の提出をしなかったために関与先に与えた損害の賠償が、税理士賠償保険によって填補されるか否かの判断が争われていた事件で、最高裁は不正の助長を防止しようとする税賠保険の特約条項の趣旨・目的に反するものではないと判断して控訴審判決を破棄、差し戻した。

 この事案は、関与先から増額更正された消費税相当額の損害賠償を請求された税理士が賠償額は税賠保険によって填補されるべきであると主張、保険会社に対して更正額と申告額の差額相当額に相当する保険金等の支払いを求めていたという事案だ。

 控訴審は、本来納付すべき税額と過少申告等に基づいて納付した税額との差額相当額の損害賠償を認めると過少申告等の違法な行為を助長する恐れがあることから、保険による填補はしないという特約条項の内容を重視、税理士の主張を棄却していたわけだ。

 これに対して最高裁は、税理士の賠償すべき損害が税制選択上の過誤によって生じたものである時には、依頼者に有利な原則課税方式が適用されないことにより、形式的にみて過少申告があったとしても特約条項の適用はないと解釈。つまり、不正な過少申告等に関わった税理士が申告に係る税額と本来納付すべき税額との差額を依頼者に賠償し、その賠償額を税賠保険によって填補されることによって生じ得る納税申告に係る不正の助長を防止しようとする特約条項の趣旨、目的に反することはないという判断だ。税賠保険の免責事由の在り方が問われる最高裁判決といえよう。

(2003.07.18 最高裁第二小法廷判決、平成12年(受)第1394号)