残余利益分割法による独立企業間価格の算定は違法と判示
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:04/07/2015  提供元:21C・TFフォーラム



 海外に設立した間接子会社(外国法人)との国外関連取引を通じて支払われた対価の額の算定をめぐり、原処分庁が残余財産分割法によって独立企業間価格を算定したことの適否が争われた事件で東京地裁(増田稔裁判長)は、検証対象法人との市場の類似性を欠く、比較可能性を有しない法人を比較対象法人に選定して基本的利益を算定したものであるから違法と判断、原処分を全面的に取り消す判決を言い渡した。

 この事件は、自動車の販売及び製造を行う内国法人が、ブラジルに設置された自由貿易地域(いわゆるマナウスフリーゾーン)で自動二輪車の製造及び販売事業を展開する間接子会社(外国法人)との間で行われた自動二輪車の部品等の販売及び技術支援の役務提供等の国外関連取引を行ったことに伴って支払いを受けた対価を収益に算入して申告したことが発端になったもの。

 しかし原処分庁が、間接子会社である外国法人から支払われた対価の額を利益分割法による算定では独立企業間価格に満たないと否認、利益分割法による独立企業間価格と内国法人が享受した国外関連取引に伴う対価との差額を所得に算入すべきであるとして更正してきたため、内国法人がその取消しを求めて提訴したという事案である。

 これに対して判決は、原処分庁側がブラジルのマナウスフリーゾーンで事業活動を行うことによる税制上の利益であるマナウス税恩典利益を享受している間接子会社である外国法人の比較対象法人として、同フリーゾーンの外で事業活動を行い、マナウス税恩典利益を享受していない法人を選定するとともに、マナウス税恩典利益の享受の有無について何らの差異調整も行わなかったと認定した。

 その上で、検証対象法人との市場の類似性を欠き、比較可能性を有しない法人を比較対象法人として選定して、検証対象法人の基本的利益を算定したものであるとも指摘した。そうした判断から、国外関連者から技術支援の役務提供等の対価として支払いを受けた対価の額を、残余利益分割法によって独立企業間価格を算定したのは違法である旨の判決を言い渡している。

(2014.08.28東京地裁判決、平成23年(行ウ)第164号)