原審同様、控訴審も税理士の注意義務違反を認定する判決
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:04/15/2003  提供元:21C・TFフォーラム



 申告期限から5年経過後に発覚した特別損失について職権更正を求める嘆願の指導をしなかった税理士の注意義務違反を認めた前橋地裁判決を不服として税理士が控訴していた事件で、控訴審(大内俊身裁判長)も原審を支持、税理士の主張を斥ける判決を下した。

 この事件は、職権更正期限となる申告期限から5年が経過する前の時点で発覚したワラント債にかかる特別損失をめぐって、当初申告に対する減額更正を求める嘆願指導をしなかった税理士に対して注意義務違反の有無が問われていたもの。1審は、税理士が必要な対応をしていれば、職権更正によって還付されたかもしれない蓋然性を肯定することができると判示、税理士に注意義務違反があったことを認める判決を下した。そこで、この判決を不服とした税理士が原審判決の取消しを求めて控訴していたという事案だ。

 税理士は、嘆願は税務署長の裁量に委ねられているものであるため、嘆願についての説明義務も、指導の義務も生じないと反論、原審判決の取消しを求めていた。

 これに対して、控訴審判決はまず、国税通則法70条が減額更正や還付金があるものについて更正期限を5年にしている趣旨に触れ、納税者に不利益を課す結果となっている課税処分については、できる限りその状態を是正すべきことにあると解釈。その解釈にそって、更正が裁量に属するものであっても、所要の措置をとれば還付の蓋然性があると判断した原審を支持した。そうであれば、税理士が嘆願指導を知っており、その処理も明らかであるにもかかわらず、クライアントに説明しなかったのであるから、説明義務違反の程度はより強くなると指摘、1審同様、税理士の過失を認める判決を下している。 

(2003.02.27 東京高裁判決、平成14年(ネ)第3787号)