国税滞納に係る差押処分の取消請求を効果消滅を理由に却下
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:08/29/2006  提供元:21C・TFフォーラム



 国税を滞納中の有限会社(A社)の事業を引き継いだ運送会社(B社)が、国が国税債権の徴収のためにA社の第三債務者らに対する各債権を差し押さえたことに対して、その取消しを求めていた事件で、広島地裁(坂本倫城裁判長)は既に滞納処分が完了し、差押えの効果は消滅していると判断、差押えを取り消すことによって回復すべき法的利益は全く認められないと判断、A社に係る差押処分の取消請求を棄却した。

 この事件は、運送業等を営むB社が貨物自動車運送事業等を営む有限会社A社の事業を引き継いだことがそもそもの発端になっているが、A社は国税を滞納していたため、国がその国税債権を徴収するために、A社が第三債務者らに対して有していた債権(つまり運送費等)を差し押さえたことから、A社の事業を引き継いだB社が、A社が第三債務者らに有していた債権も引き継いでいるのであるから、差押処分は違法であるとしてその取消しを求めていたという事案である。

 原告のA社は、B社の運送車両等を買い受けて自ら事業展開しているから、それ以降の債権はA社に帰属するとともに、B社も取引先にA社に事業を引き継いでもらったことを通知する一方、国税の調査員がA社にその事実関係等を尋ねている事実経過を踏まえれば、国側に過失が認められると主張していたわけだ。

 これに対して判決は、事実関係を認定した上で、滞納処分は完了し、各差押えの効果もその目的を達成して消滅したと指摘。その上で、各差押えを取り消しても取り消さなくても、その法的地位に何らの変更は生じないから、各差押えを取り消すことによって回復すべき利益は認められないと判断、原告A社の取消請求を却下している。

(2005.03.31 広島地裁判決、平成15年(行ウ)第24号)