税理士に使用者責任はないと判示、弁護士の賠償請求を棄却
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:02/23/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 顧問契約を締結していた弁護士から、法人化する際の資本金額の設定をめぐる相談の際の税理士事務所職員の回答に税理士は使用者責任を負うと主張され、消費税相当額の損害賠償を求められた事案で、東京地裁(鶴岡稔彦裁判長)は税理士に使用者責任はないと判断、弁護士の損害賠償請求を棄却した。弁護士は判決を不服として控訴したが、控訴審も棄却、さらに上告したものの不受理となり、税理士勝訴で事件は確定した。

 この事件は、税務顧問契約を締結していた弁護士が、弁護士法人の設立に当たって節税に資する資本金額等を税理士事務所職員に相談したところ、その職員から資本金額はいくらでもよい旨の回答を得たため、資本金額を1000万円として法人を設立した結果、資本金額を1000万円未満にしていれば課されなかったはずの消費税額3000万円相当額が課されることになったのは職員の回答によるものであり、その職員の回答は誤回答として不法行為を構成するものであるから、税理士は使用者責任を負うと主張、税理士に対して消費税相当額の損害賠償を求めていたという事案だ。

 これに対して判決は、弁護士が証拠として提出した相談のための電子メールが発信されたからといって、これに対する回答があったと決めつけることはできないと一蹴。また、面談の際のメモも面談時に作成されたと裏付ける客観的証拠が存在するわけではない以上、弁護士の主張を裏付けるに足りるだけの証拠は見いだせないと認定、弁護士側の主張を棄却している。判決を不服とした弁護士は控訴したが、控訴審の東京高裁も同様に棄却(平成21年7月23日判決)。さらに上告も不受理となり、税理士勝訴で事件は確定した。

(2009.02.19 東京地裁判決、平成19年(ワ)第29110号)