事業譲渡の際は譲渡財産を限度に第二次納税義務を負うと判示して棄却
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:03/15/2011  提供元:21C・TFフォーラム



 事業譲渡の譲受人である法人が、譲渡人である法人の滞納国税をめぐって、譲渡財産を限度に第二次納税義務を負うか否かの判断が争われた事件で、東京地裁(川神裕裁判長)は滞納法人から事業の譲渡を受けた譲受人である法人が負うべき第二次納税義務は譲受財産つまり滞納法人から譲受人が譲り受けた財産を限度とすると判示して、原告である法人側の主張を悉く斥けた。

 この事件は、医療器械販売業等を営む株式会社から医療機器販売等を営む株式会社が事業の全部を譲り受ける旨の事業譲渡契約を締結、その財産の譲渡を受けたことが発端になっている。ところが、譲渡人である株式会社が滞納法人であったため、原処分庁が事業譲渡によって譲り受けた財産を限度に譲受人である株式会社が第二次納税義務(国税徴収法38条)を負うとする告知処分を受けたことから、事業譲受による実質的な利得はないため納税義務はなく、告知処分時において譲り受けた積極財産のうち実質的に残存している財産の範囲のみで第二次納税義務を負うと主張して、第二次納税義務の告知処分の取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して判決は第二次納税義務制度が設けられている趣旨を説明した上で、国税徴収法38条が規定している譲受財産とは事業の譲渡を受けた譲受人が譲渡を受けた財産を意味するものであることは明らかと原告の法人側の主張を一蹴。結局、滞納者から事業譲渡を受けた譲受人が追うべき第二次納税義務は譲受財産を限度とされ、その場合の財産とは事業譲渡がなければ納税者の責任財産となっていたはずの積極的な資産価値を有し、担保権や差押え、換価等の対象となる個々の資産あるいはその総体を指すと解釈して、原告の法人側の主張を悉く斥ける判決を言い渡している。

(平成21年(行ウ)第601号、東京地裁平成22年8月27日判決)