処分の名宛人以外の共有者も取消しを求める利益を有すると判示
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:09/04/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 滞納者と不動産の共有持分を有する者が共有不動産の滞納者に係る持分を差し押さえられた場合に、滞納者の持分に係る差押処分の取消しを求めることが可能か否かの判断が争われた事件で最高裁(小貫芳信裁判長)は、他の共有者も差押処分で権利の制限を受けるから、行政処分の取消訴訟においては原告適格を有する旨の判決を言い渡した。

 この事件は、相続開始に伴い土地・建物を3人の相続人が各持分に応じて相続したものの、相続人の一人が相続税の納付期限後も納付せず、滞納を続けていたため、税務署が各不動産に係る滞納者の持分を差し押さえ、その旨の登記をしたのが発端。そこで、共有持分を有する他の相続人がその取消しを求めたところ、控訴審の福岡高裁が差押処分は滞納者の持分にされたもので、他の相続人の持分にされたものではないことを理由に原告適格を有していないと判示して却下したため、上告して処分の取消しを求めた事案である。

 上告審はまず、行政処分の取消訴訟に係る原告適格を定めた行政事件訴訟法9条に触れ、行政処分の取消しを求めることができる「利益を有する者」とは自己の権利等を侵害され又は必然的に侵害される恐れのある者と指摘。行政処分の名宛人以外の者が権利の制限を受ける場合は、名宛人と同様に自己の権利を侵害されかつ必然的に侵害される恐れのある者として行政処分の取消しを求める法律上の利益を有し、原告適格も有すると解釈した。また、国税徴収法に基づく不動産の差押処分においては、滞納者の持分と使用収益上の不可分一体の持分を有する他の共有者にも処分の権利を制限することになると指摘した。

 その結果、共有不動産について滞納者の持分が差し押さえられたことによって他の共有者は権利の制限を受け、自己の権利を侵害され又は必然的に侵害される恐れのある者として、取消訴訟の原告適格を有すると解するのが相当と判示した。しかし、証拠資料から取消しの訴えに係る請求に理由がないのは明らかであって原審の判断が結論に影響を及ぼすものではないという判断から、結局、棄却という結果で結審している。

(2013.07.12最高裁判決、平成24年(行ヒ)第156号)