顧問契約上の業務は税務代理等に限られると認定、賠償請求を棄却
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:09/25/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税の仕入税額控除が認められなかったのは課税事業者選択届出書に関する指導・助言を怠ったためとして、税理士法人に還付金相当額等の損害賠償を求めた事件で東京地裁(渡部勇次裁判長)は、顧問契約上、税務に関する経営判断に資する助言等を行う義務がなく、適切な情報提供によって課税事業者になったほうが課税上有利になると認識し得たともいえないから助言・指導義務があったとはいえないと認定、賠償請求を棄却した。

 この事件は、税務顧問契約を締結していた映画製作等を業とする法人が税理士法人に指導・助言の債務不履行を理由に損害賠償請求したもので、期末在庫の棚卸資産に係る仕入税額控除ができなかったのは税理士法人が課税事業者選択届出書の提出に関する指導・提言の義務を怠ったためと主張して、仕入税額控除が認められた場合に得られる還付金相当額等の賠償金の支払いを求めた事案だ。

 つまり、仕入税額控除が認められる届出制度を法人側が知っていると確定できない限り、専門知識のない法人に予め指導・助言する義務があったと主張して、専門家としての指導・助言義務の債務不履行に伴う還付金相当額1500万円余の損害賠償を税理士法人側に請求したという事案である。

 しかし判決は、顧問契約の内容等を事実認定の上、顧問契約上なすべき業務は基本的に税務代理や税務相談等に限られ、原告から個別の問合せ等がない限り、業務内容を積極的に調査、予見して、税務に関する経営判断に資する助言・指導を行う義務は原則的にないと認定。

 また、法人側から税理士法人に適切な情報が提供され、課税事業者の選択が課税上有利になる特段の事情を有していたことを認識し得たとはいえず、在庫が見込まれるときに予め連絡をするように注意喚起する助言、指導をする義務が税理士法人側にあったともいえないと認定。

 結局、届出書の提出による課税事業者の選択が課税上有利になる旨を税理士法人が容易に認識し得たとはいえないと判示して、法人側の主張を棄却している。

(東京地裁平成24年3月30日判決、平成22年(ワ)第42085号)。