税理士報酬には難易度等が暗黙裡に形成されていると判決
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:07/04/2000  提供元:21C・TFフォーラム



 税理士報酬規定に基づいて算出した4000万円にのぼる報酬額の支払いをクライアントが拒否したことから、税理士がその支払いを求めて争われていた民事訴訟で、名古屋地裁は税理士の主張を認め、クライアントに報酬の支払いを命じる判決を下した。

 この事件は、クライアントの依頼に応じて特別土地保有税と固定資産税の税務処理にあたった税理士が、税理士報酬規定に基づいて算出した4000万円にのぼる報酬を請求したところ、「節税効果がない」ことを理由にクライアントが支払いを拒否したことから、税理士がその支払いを求めて訴訟を提起していたという事件だ。

 税務代理委任契約を交わす際、税理士報酬額については税理士報酬規定の最高限度額を基準とし、節税が可能な場合に限り節税の効果に応じて原告・被告間で協議して定めることを合意していた。しかし、クライアント側は、委任事項が特別土地保有税の節税対策でありかつ報酬規定により税目ごとに受任1件として算定すべきであり、クライアントへの寄与度や貢献度は高いものではなく、税理士報酬額は相当ではないと報酬の支払いを拒否するとともに、委任契約が公序良俗違反であるという主張を展開した。

 判決は、事実認定の上、報酬額について明確な合意がなかった場合は、特段の事情がない限り、税理士会の会則が定めている報酬の最高限度額に関する規定を上限に、事案の難易度、処理時間、労力等を考慮して相当と認められる額の報酬を支払う合意が暗黙のうちになされているものと示唆するとともに、事案としては相当程度の難易度があったと伺えると指摘して、ほぼ原告の主張を認める金額の報酬額を算定している。

(2000.3.24名古屋地裁判決、平成10年(ワ)224号)