納税総額に差異が出ることを立証するのは納税者側と判示
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:12/11/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 定額法による修正申告を余儀なくされ、追徴税額の損害を被ったのは税理士が定率法の届出を怠ったためとして損害賠償を求めた事件で、大阪地裁(渡部五郎裁判長)は税理士が定率法の届出をしていれば、償却期間全体を通じても延滞税、過少申告加算税を納税者が負担する必要はなかったと判断、税理士に損害賠償を命じる判決を下した。

 この事件は、スーパー銭湯を経営する納税者が、税理士に建物の附属設備、機械・装置、運搬具等の減価償却費を定率法に基づく申告手続きを依頼したところ、税理士がその選定届出を怠ったために、定額法による減価償却費の計算による修正申告を余儀なくされたのが発端。そこで、納税者が追徴税額の損害を被ったとして、委任契約の債務不履行による損害賠償請求権に基づき、所得税・延滞税・過少申告加算税、市民税、府民税、遅延損害金の損害を求めていた事案だ。

 税理士は、減価償却期間全体からみれば定額法と定率法に差異はなく、定額法で修正申告したとしても実質的な損害は生じないと主張。一方、納税者は定額法と定率法に差異がないのは減価償却費で税金の額ではないと反論。つまり、利益の額が異なれば定率法と定額法では納税額に差異が生じるという考えだ。

 これに対して判決は、定額法でも定率法でも減価償却期間全体を通じてみれば、償却総額に差異はないと示唆。その上で、延滞税・過少申告加算税については税理士が委任の趣旨にそって定率法の届出をしていれば、償却期間全体を通してみても納税者が負担する必要は全くなかったと指摘して、相当因果関係の範囲内にある損害は認められると判示した。

 しかし、所得税等については単一年度の追徴税額のみを捉えて損害額を認定することはできないと示唆して納税者の主張を否定した。また、納税総額に差異が出るか否かは納税者側が立証すべきで、立証責任を税理士に転換しようとするものにすぎないとも判示している。

(2007.05.14 大阪地裁岸和田支部判決、平成17年(ワ)第608号)