税理士の業務の履行に過失を認定して損害賠償を命じる判決
カテゴリ:13.会計士・税理士業界 裁決・判例
作成日:06/30/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 同族会社の留保金課税の適用誤りをめぐって税理士と会計監査法人が損害賠償請求をされた事件で大阪地裁(稻葉繁子裁判長)は、税理士に業務の履行の過失を認定する一方、会計監査法人は過失があったものの、税理士の行為とは客観的関連共同性がなく、損害との因果関係もないと判示、税理士にのみ損害賠償金の支払いを命じる判決を言い渡した。

 この事件は、旧租税特別措置法68条の2第1項4号の同族会社の留保金課税の非課税制度を利用することができたにもかかわらず、それを利用せずに余分な納税に伴う損害が生じたとして、税理士と会計監査法人に対して法人側が委任義務の不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求をしていた事案。

 これに対して会計監査法人は法人への教示は監査法人としての行為ではなく従業員の個人的な行為でしたことであり、確定的な判断として教示したものではないため使用者責任はないと主張。また税理士も、同特例制度の適用の可否を検討することは委任事項の対象外と明確にされていたため、適用関係を検討しなかったにしても責任はないと主張して争ってきたわけだ。

 これに対して判決は、会計監査法人の監査に債務の不履行はないものの、同特例制度が適用されるか否かの自己資本率の計算は周辺業務であるが、その計算を引き受けた以上、その内容を誠実に履行すべきであり、その内容に誤りがあったのだから過失を認定。また税理士の場合、専門的な立場から依頼者の説明に従属することなく必要な範囲で、その依頼が適切であるかも調査確認すべきと指摘。

 同時に、法人税の申告書の作成及び税務代理を委任されたから、法令の許容する範囲内で依頼者の利益を図る義務があったにもかかわらず、その調査確認において法人の担当者が陥っていた誤りを受け継いだ過失があると指摘、税理士に対して損害賠償責任を求める判決を言い渡している。税理士側がこの判決を不服として控訴したが、控訴審で和解した。

(2008.07.29 大阪地裁判決、平成18年(ワ)第8656号)