収用特例の適用に誤指導があったと認定、控訴審に破棄差戻し
カテゴリ:16.その他 裁決・判例
作成日:05/31/2010  提供元:21C・TFフォーラム



 土地の売却先である自治体職員の指導に従い、土地の売却益に対して交換特例(措法33の4(1)一)を適用して申告したところ、国税当局がその適用を否定して更正処分の上、過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、土地の売却先である自治体に損害賠償請求していた事件で、最高裁判所(田原睦夫裁判長)は上告人(納税者)の主張を斥けた控訴審を破棄、納税者側の損害の有無、過失相当額の可否を更に審理させるため、差し戻した。

 控訴審は、自治体職員の行為に国家賠償法上の違法が認められるものの、その指導と土地売却の間に因果関係はなく、的確な税額を納付したのであるから、損害が発生したとは言えないと認定して、納税者側の損害賠償請求を棄却する判決を下していた。

 これに対して最高裁は、土地の売却に係る譲渡所得に対して収用換地等に係る特別控除制度の適用はないのであるから、納税者が同特例の適用がないことを前提とする税額を納付したからといって、直ちに本税相当額の損害が発生したとはいえないと指摘。しかし、自治体職員の教示や指導がなければ、納税者が同特例の適用を前提に申告することはなかったと指摘。

 さらに、納税者側にその教示や指導に安易に従った点に過失があることは否めないものの、違法な公権力の行使によって、納税者側に過少申告加算税相当額の損害が発生したことは明らかと認定。しかも、事実関係の如何によっては延滞税の全部又は一部に相当する額の損害や、他の特例の適用を検討する機会を逸したことによる損害が発生したとみる余地のあることは否定できないと判示して控訴審判決を破棄するとともに、自治体職員の指導等によって生じた損害の有無、過失相当額の可否を更に審理し尽くさせるために、控訴審に差戻しを命じる判決を言い渡した。

(2010.04.20 最高裁第三小法廷判決、平成20年(受)第2065号)