NPO法人によるホームレス向けの居室の貸付けを収益事業と判断、棄却
カテゴリ:01.法人税 裁決・判例
作成日:11/01/2016  提供元:21C・TFフォーラム



 NPO法人が、ホームレス等に建物の居室を居住用として貸し付ける事業が収益事業に該当するか否かの判断が争われた事件で東京地裁(増田稔裁判長)は、入居者との間で賃貸借契約を締結して有償で貸し付け、入居者から家賃等の収入を得ていることから不動産貸付業に該当すると判断、棄却した。

 この事件は、特定非営利活動促進法が定める特定非営利活動法人が、原処分庁から法人税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分、消費税等の決定処分等を受けたことから、ホームレス等に対する建物の居室を居住用としての貸し付ける行為は収益事業に該当しないと主張して、原処分の取消しを求めて提訴したという事案。

 同法人は建物貸付業の他、養殖業、地域情報紙の配布事業等々を行っていたため、物品販売業及び収益事業の該当性、業務委託管理費の損金性及び課税仕入れの可否判断等、争点は多岐にわたったが、NPO法人側はホームレス等への居住用の居室の貸付けは警察、行政等から懇願されて、行政上の住宅扶助として行っているものであり、宣伝や広告は一切していないことから一般営利企業による不動産貸付業とも競合せず、一般営利企業との間の課税の公平性を根拠に不動産貸付業には当たらないという主張を展開した。

 これに対して判決は、全証拠を精査しても、NPO法人の建物貸付業が課税対象外の不動貸付業に該当すると認めるに足りる事実、証拠はないと指摘した上で、入居者との間で賃貸借契約を締結して有償で貸し付け、家賃等の収入を得ているのであるから、建物貸付業が収益事業の不動産貸付業に該当することは明らかと認定。また、社会福祉法が定める簡易住宅貸付業の届出は出されているものの、社会福祉法人であることをうかがわせる事実もなく、届出によって課税対象外不動産貸付業に当たるとはいえないとも指摘した。

 さらに、一般営利企業の事業と競合しているか否かを考慮することによって、収益事業に該当するか否かを判断することは、収益事業を定めた法人税法等が予定するところでないのは明らかであり、課税の公平の観点からも相当ではないと判示して、NPO法人側の請求を棄却している。

(2016.03.29東京地裁判決、平成26年(行ウ)第190号)