立退料は非課税のため仕入税額控除は不可と判示
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:01/20/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 立退料に係る消費税相当額の仕入税額控除の可否が争われていた訴訟で、東京地裁(青柳肇裁判長)は立退料の支払いにより賃借権を消滅させる行為は課税仕入れに該当しないため、仕入税額控除は認められないと判示、納税者の訴えを棄却した。
 この事件は、製造販売等を営むA社が賃借人らに立退料3億円超を支払って建物の明渡しを受けた後、消費税の申告の際に立退料に係る消費税相当額を控除して申告したところ原処分庁が否認したため、その取消しを求めて訴訟に及んでいたというもの。原告(納税者)は賃借人らに対価(立退料)を支払って借家権を買い取り、原告に移転した借家権が混同によって消滅したものであると指摘。つまり、事業として立退料を支払うことで資産(借家権)を譲り受けたものであり、課税仕入れに係る支払対価に該当することから、立退料に係る消費税相当額を控除対象仕入税額とすべきであると主張していたもの。
 しかし判決は、立退料の中に借家権の対価とみるべき部分があるとしてもあくまでも観念的なものであり、合意解除により終了・消滅したとみる他はなく、賃借権の売買が行われたとは認められないと指摘。その解釈によれば、立退料の支払いを受け、建物を明け渡す好意をもって、資産の同一性を保持しつつ他人に資産が移転したとみることはできないことから、資産の譲渡等には該当しないと判示している。その結果、立退料の支払いにより賃借権を消滅させる行為は課税仕入れに該当せず、その支払いに係る消費税相当額を控除対象仕入税額とすることはできないとの判断から、原告の主張を斥けている。
 (97.8.8判決、平成8年(行ウ)第34号)