控訴審も仮名仕入れにかかる仕入税額控除を否定
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:11/17/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 真実と異なる仕入先の氏名や住所による仕入帳でも消費税の仕入税額控除が認められるか否かの是非が争われていた事件で、東京高裁(石井健吾裁判長)は一審の東京地裁と同様の判断を示して、控訴人(納税者)の主張を全面的に斥ける判決を下した。
 この事件は、医師向けに医薬品の現金卸売業を営む法人が、消費税の申告の際に課税仕入れにかかる消費税額をすべて控除して申告したところ、原処分庁が仮名の仕入れにかかる部分の消費税額の控除を否認したのが発端。そこで、納税者が更正処分の取消しを求めて提訴したものの、一審の東京地裁が棄却したことから控訴していたという事件だ。争点は消費税法30条7、8項の解釈、つまり仕入伝票等が仮名であっても仕入税額控除が認められるか否かにあった。
 納税者は一審段階から一貫して、同項が仕入税額控除の手続的要件を定めたものとして明確性を欠き、一般的記帳義務についての規定であると解釈。そのため、課税仕入れの事実があれば仕入税額控除は認められるべきであると主張していた。
 しかし、控訴審は消費税法全体の中における規定の位置づけが異なるのは法全体の構成上明らかであり、手続的要件の規定が法律ごとに異なっても何等差し支えないと指摘する一方で、同項は単に課税仕入れの事実を確認するための規定であると解釈。その結果、仮名の仕入帳は法定帳簿には該当しないことになり、仮名仕入れにかかる仕入税額控除を否認した原処分を妥当と判示して、納税者の主張を斥けている。
(1998.9.30東京高裁判決、平成9年(行コ)第128号)