建物が一部未完成でも仕入税額控除が可能な課税期間内の完成と認定
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:09/10/2013  提供元:21C・TFフォーラム



 工事請負契約を通じて取得した賃貸用建物の引渡時期の判定をめぐり、消費税の仕入税額控除の可否判断が争われた事件で、国税不服審判所は課税期間内に建物の大部分が完成し、所有権保存登記がされ、かつ請負代金の支払いも終えているなどの事実関係を重視して、原処分を取り消した。

 この事件は、アパート等の賃貸等を営む合同会社が工事請負契約に基づいて賃貸用建物を取得した後の消費税の申告の際に、賃貸用建物の取得費に係る消費税額の仕入税額控除をしたところ、原処分庁が否認、更正処分等をしてきたため、合同会社側が原処分の全部取消しを求めて審査請求したという事案である。

 原処分庁は、工事請負契約を通じて取得した賃貸用建物は課税期間内に共同住宅として使用できる状態になく、工事の完全完了とは認められないため、賃貸用建物の引渡しを受けた日は合同会社が申告した課税期間ではないと認定、建物の取得費用に係る消費税の仕入税額控除は認められないと主張した。つまり、建物の大部分は完成していたものの、全部の完成ではなかったことが原処分庁の否認の背景になった事案ともいえるわけだ。

 しかし裁決は、課税期間内に1)権利保全のために所有権保存登記がされ、2)金融機関との間で建物に抵当権を設定して自己の所有物として処分しているほか、3)工事請負業者に請負代金の全部の支払いを済ませている--などの事実関係を重視、課税期間内に建物の大部分は完成していたと認定した。

 つまり、建物の工事に若干の工事が残存して未完成状態にあったとしても、仕入税額控除が認められる課税期間内に建物が完成し、かつ引渡しもあったものと同視できるという判断だ。結局、賃貸用建物は課税期間内に引渡しを受けており消費税の仕入税額控除は認められると判断して、原処分を全部取り消している。

(国税不服審判所、2012.07.24裁決)