帳簿等の後出しをめぐる一連の事件で大阪地裁が初判断
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:09/21/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 税務調査の際に税務職員から帳簿等の提示を求められてこれを拒否すると、所得税や法人税の場合、調査非協力ということから更正処分、青色申告承認取消し、ひいては審査請求や訴訟で実額反証による取消しの請求といった話になる。
 ところが、これが消費税の調査の場合は少し話が違ってくる。課税サイドは帳簿等の不提示を仕入税額控除の要件である帳簿等を保存していない場合に当たると判断、仕入税額控除をゼロとする更正処分、それに伴う賦課決定処分をしてくるからだ。
 税務調査の際にこの消費税に係る帳簿等の提示を拒否した場合、消費税法30条7項の帳簿等を保存していない場合に該当するのか否かが争われていた事件で、大阪地裁(八木良一裁判長)はこれら一連の事件においては初めてとなる注目すべき判決を下した。判決文はまず、保存という文言の通常の意味からも、また法全体の解釈からも、納税者が税務調査の際に帳簿等の提示を拒否したことを即、保存がない場合に該当するという課税サイドの主張には無理があり、法解釈の域を超えていると指摘。同時に、課税仕入れに係る消費税額の確認の主体は課税庁のみにとどまらず、裁決庁、最終的には裁判所も当然に予定されていると示唆した。その上で、処分当時に納税者が帳簿等を所持・保管していたことを証明した場合は、それらの書面が法律上の要件をクリアしたものであれば仕入税額控除を認めるべきであると判示している。しかしながら、訴訟の際に納税者から提出された資料はこれらの要件を満たしているとは認められないと認定、納税者が求めた消費税に係る賦課決定処分等の取消しを求める請求を棄却している。
(1998.8.10大阪地裁判決、平成7年(行ウ)第25号)