請負工事に係る収入金額全額が課税売上高と判断
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:10/31/2005  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税の課税業者になるのか免税業者になるのかの拠り所となる基準期間の課税売上高が3000万円以下か否かの判断が争われた審査請求事案で、国税不服審判所は、請求人は工事全体を請け負っていると認めるのが相当であり、収入金額の全額が課税売上高そのものであると判断、審査請求を棄却している。

 この事案は、住宅の製図設計を営む個人事業者が、実質的収入は設計・監理料のみのため課税売上高は3000万円以下であることから免税業者に当たると判断、消費税の申告をしなかったことが発端。しかし原処分庁は、全収入金額が3000万円を超えるため課税事業者に当たると認定、消費税の決定処分、無申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、事業者がその取消しを求めていたという事案だ。

 つまり原処分庁は、請求人が設計・監理業務を行う一方で、新築工事や増改築工事を直接受注者から請け負って建築業者に外注しているのであるから、工事に係る全収入金額が課税売上高になると認定したわけだ。これに対して請求人は、工事収入金額は工事代金の総額から工事関係者の取り分を差し引いた金額つまり設計・監理料のみであると反論、納税義務者ではないと主張した。

 裁決は、請求人は建築工事の全体を請け負っていると原処分庁と同様に認定、工事に係る収入金額の全額が課税売上高となり、設計・監理料のみを課税売上高とする請求人の主張を棄却した。請求書等の保存がなかったため仕入税額控除も認められず、こうした取引の場合、請求書等の保存が要になることを示唆する裁決ともいえる。

(国税不服審判所、2004.12.09裁決)