帳簿等の後出しをめぐる一連の訴訟で東京地裁も判決
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:10/28/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 帳簿等の後出しは帳簿等を保存しない場合に該当するのか、その解釈が争われていた事件の判決を東京地裁も下したことで、一連の訴訟に対する判決が出揃ったことになる。東京地裁(富越和厚裁判長)は、帳簿等の不提示は帳簿等を保存していない場合に当たると判断した津地裁とほぼ同様の内容となった。が、判決を読むと他の二判決に比べ切れ味の悪さが目立ち、納税者と課税サイドの主張を行ったり来たりする内容となっている。
 例えば、消費税法30条7項が定める保存とは適法な提示要請に応じて提示することができる状態での保存をいうと解釈。そのため、訴訟の段階で帳簿等が提出された場合は保存しない場合に該当しないと推認できると示唆している。が、その一方で、税務調査時の適法な提示要請に対して正当な理由なく提示を拒否したため税務職員が内容確認をできなかったという事情が認められれば、逆にその時点において帳簿等を保存していなかったと推認することもできることから、消費税法30条7項の帳簿等を保存していない場合に該当するものとして仕入税額控除は認められないことになると判示しているからだ。
 ただし、提示を拒否されたか否かの判断は、調査の過程で社会通念上当然に要求される程度の努力を行ったか否か、納税者の言動等の事情を総合的に考慮して行われるべきであると津地裁と同様に課税サイドに釘をさしている。いずれの事件も納税者が控訴、舞台は高裁に移っているわけだが、3事件とも税務調査のトラブルがそもそもの契機。判決分からも伺えるように、課税サイドには税務調査時の慎重な対応が求められよう。仕入税額控除の否認に伴う納税者の税負担は非常にきつくなるからだ。
(1998.9.30東京地裁判決、平成6年(行ウ)第229号)