真実の仕入先の記載なければ仕入税額控除は不可
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:09/29/1997  提供元:21C・TFフォーラム



 真実と異なる仕入先の氏名等が記載された仕入帳でも、仕入税額控除が認められるか否かその是非が争われていた訴訟で、東京地裁(富越和厚裁判長)は、仕入税額控除を受けるために保存が求められている法定帳簿には、真実の仕入先の氏名や名称の記載が必要と判示、納税者の主張を全面的に斥ける判決を下した。
 この訴訟は、医薬品の現金卸売業を営む同族会社が課税仕入れに係る消費税額をすべて控除して申告したことに対して、原処分庁が仮名の仕入取引に係る消費税額については仕入税額控除を否認、更正・過少申告加算税の賦課決定を行ったのが発端。そこで、その取消しを求めて異議申立て・審査請求を経て、訴訟を起こしていたという事案である。
 原告は、現金問屋という事業の特性から、仕入先の真実の名称等を記載することは著しく困難で、確認も不可能であることを一貫して主張していた。しかし、判決は医家向けの医薬品は、一般人には容易に入手、販売し得ないこと。しかも、薬事法の適用を受けた一般販売業者の取引の場合、品名や数量の他、譲渡人・譲受人の氏名を書面で保存することが義務づけられていることを指摘。そのため、個々の取引先の氏名等の確認が不可能、かつ著しく困難であるとは認められないという判断を下している。
 課税仕入れに係る消費税額の支払いの事実があっても、法定帳簿の氏名等の記載が仮名の場合には仕入税額控除が認められないことを示唆した初めての判決だが、仕入先を明らかにしにくい取引慣行のある事業者等にとっては、不満の残る判決といえよう。
(97.8.28東京地裁判決(行ウ)第232号)