一括比例配分方式から個別対応方式への変更にNO
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:10/27/1997  提供元:21C・TFフォーラム



 個別対応方式と一括比例配分方式で納付すべき消費税額に著しい差額が生じることが、減額更正の理由となり得るか否かが争われていた事件で、福岡地裁(西理裁判長)はその選択が納税者の選択に委ねられている以上、納税額の格差が顕著になるとしても税負担の公平に反することにはならないと判示、原告の主張を全面的に斥ける判決を下した。
 この事件は、分譲住宅等の建築・販売を行う原告が、一旦は一括比例配分方式を選択して消費税の申告をしたものの、申告後、個別対応方式による場合と比べ納付税額に著しい差額が生じたことから、個別対応方式で計算し直した額による減額更正の請求をしたのが発端。これに対して、原処分庁が更正すべき理由がない旨の通知処分をしたため、納税者がその一部取り消しを求めて争われていた抗告訴訟である。一括比例配分方式による納付消費税額が個別対応方式に比べて著しく高額になる場合、一括比例配分方式の適用は税負担の公平に反するため許されないと主張していたものだ。
 福岡地裁は両方式の長所・短所を踏まえた上で、両方式の選択が納税者の任意に委ねられている以上、その不利益を甘受するものとして選択したと見るほかないこと。また、仕入控除税額の差額が高額になる場合は、具体的な金額を納税者が認識していればあえて一括比例配分方式を選択することは通常考えられないため、原告の利益を不当に害しているとまでは言えないという判断から、原告の主張を棄却している。消費税法が抱える制度的な問題が引き起こした事件ともいえるが、今後も同種の事件は起こり得よう。
 (1997.5.27福岡地裁判決、(行ウ)第4号)