保存とは調査時の帳簿提示までも含むと判示
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:05/17/1999  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税法30条7項が定める仕入税額控除の要件つまり帳簿書類又は請求書等の保存とは、単に物理的な保存のみならず税務調査の際に提示することまでを含むのか、その解釈が争われていた事件で、東京地裁(富越和厚裁判長)は税務調査の際にその内容を確認できるように提示できる状態、態様で保存していることを意味すると判示、課税処分に対する納税者の取消請求を棄却した。
 この事件は、昨年相次いで判決が下りた大阪地裁・津地裁・東京地裁の事件と同様、消費税の仕入税額控除の要件である帳簿書類等の「保存」の解釈が争点になったもの。つまり、税務調査の際に調査官から帳簿書類等の提示を求められたにも関わらず、その提示を拒んだ場合も保存していないものとみなされるのか否かということだ。
 これに対して、今回の東京地裁の判決は津地裁と同様の判決内容となった。判決はまず消費税法の仕入税額控除の際に帳簿書類等の保存を求めていることの意義を解釈。その上で、多段階累積排除を適正に実現するためにも、帳簿書類等の保存とは適法な調査に応じて課税仕入れの存否、課税仕入れに係る消費税額を確認できるように提示し得る状態、態様での保存を意味していると判示した。また、調査官の帳簿書類等の提示要請は適法な調査に基づくものであるにも関わらず、原告の対応は提示を拒否したものというほかはなく、仮に帳簿等を所持していたとしても保存していない場合に該当する認定、仕入税額控除を認めないとした原処分庁の課税処分に違法性はないという判決を下している。
(1999.3.30東京地裁判決、平成8年(行ウ)第143号)