津地裁は帳簿の保存には提示も含むと判断
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:10/15/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税の帳簿等を調査時に提示しない、いわゆる帳簿等の後出しの場合でも帳簿等を保存している場合に該当するか否かが争われていた事件で、津地裁(山川悦男裁判長)は先に判決が下りた大阪地裁の判断とは全く逆の見解を示して、納税者の主張を斥けた。大阪地裁は、保存とは文字通り所持・保管を意味し、課税処分時に納税者が帳簿等を所持・保管していたことが審査請求や訴訟段階で証明され、その帳簿等が法定の記載要件等をクリアしたものであれば仕入税額控除は認めるべきであると判示している。
 しかし津地裁は、仕入税額の証明手段は法定の帳簿等に限定され、その保存がない場合は他の資料で課税仕入額を推認できるとしても仕入税額控除は認められないと指摘。その上で、帳簿等の保存とは単なる客観的な保存と解釈すべきではなく、税務職員による適法な提示要求に対して保存の有無、記載の内容を確認できる状態にあることを含むと解釈して、大阪地裁の判断とは180度異なる判断を下した。つまり、税務職員の適法な提示要求に対して、正当な理由なく帳簿等の提示を拒否した場合は、審査請求や訴訟時に帳簿等を後出ししても仕入税額控除は認められないという厳しい解釈を示した。
 そうなると、納税者に重い税負担がもたらされることにもなる。そこで判決は、提示を拒否したか否かの認定については、調査の際に税務職員が社会通念上当然に要求される程度の努力を行ったにもかかわらず、帳簿等の提示を受けることができなかったと客観的に認められることが必要であると課税サイドに釘を刺している。
(1998.9.10津地裁判決、平成6年(行ウ)第9号)