賃貸借契約は架空のものと認定して重加算税は適法と裁決
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:11/19/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税の還付申告をめぐって、新築アパート完成見学会のための賃貸借契約が架空のものか否かの判定が争われた事案で国税不服審判所は、建設会社の帳簿書類等には建物の完成見学会が開催された旨や賃貸料が支払われた旨の記載がなく架空のものであると認定、審査請求を棄却した。

 この事案は、建物の貸付業を営む審査請求人が消費税等の還付申告を行ったことに対して、原処分庁が課税売上の基となった新築アパートの完成見学会のための賃貸借契約を架空と認定、更正の上、重加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて審査請求していたもの。審査請求人は賃貸借契約が存在しており、その契約書に基づいて賃貸料を受領して領収書をアパート建設会社の従業員に渡しているのであるから、賃貸料は課税資産の譲渡等の対価の額として存在すると主張していた。

 これに対して裁決は、アパートを建設した建設会社の帳簿書類等には完成見学会の開催や賃貸料が支払われた旨の記載がなく、賃貸借契約書自体も建物完成時に建設会社の従業員が関与税理士からの依頼に応じて、審査請求人、建設会社の記名・押印箇所に他の書類の記名・押印部分をコピーし、切り貼りするなどして作成した架空のものであるから、賃貸借契約の締結、建物の完成見学会の開催及び賃貸料の授受の事実は認められず、賃貸料は課税資産の譲渡等の対価としては存在しないと請求人の主張を否定した。

 その結果、課税期間の課税資産の譲渡等の対価は零円であるから課税売上割合が零となる上、建物は居住用住宅であることから、建物の取得価額等は非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れの額となり、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれの方式によっても、消費税の仕入税額控除は零円になると指摘。さらに請求人の行為は隠ぺいまたは仮装行為に該当するとも認定、重加算税の賦課決定処分を妥当とする裁決を下している。

(国税不服審判所、2006.12、07裁決)