消費税仕入控除での「帳簿保存」の定義で高裁が判断
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:12/07/2000  提供元:21C・TFフォーラム



 税務調査時に帳簿等を見せなかったことは、消費税法30条(消費税仕入税額控除)7項にある「帳簿及び請求書等を保存しない場合」当たるとする具体的判断を高裁レベルで初めて下した名古屋高等裁判所の判決が税理士の間で話題になっている。
 これは、納税者が税務調査を受けた際に、調査官に対して身分証明書のコピーを要求したが受け入れられなかったため帳簿の提示を拒否。このため税務当局は、帳簿の保存がなかったとして消費税の仕入税額控除を否認し更正処分をしたため争われた事案。裁判では納税者が、帳簿書類を提示し帳簿は保存されていたと主張し、税務当局は正当な理由もなく応じない場合は保存しているとは認められないと主張した。
 判決では、まず「調査官の身分は確認は税務署に電話をすれば足りる」としてこれが正当な理由には当たらないとした上で、消費税仕入税額控除でいう『帳簿等の保存』については、「単に物理的な保存では足りず、税務調査等による提示要求時には、これに直ちに応じることができる状態での保存を意味する。例えば、取消訴訟の係属中という一時点で帳簿等が提示できる状態になっていればよいというものではない」と、判断して納税者の主張を退けており、今後の帳簿等の保存のあり方について示した注目される裁判例だ。