船舶の建造に係る承諾書取引は課税仕入れと控訴審も判断
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:11/06/2012  提供元:21C・TFフォーラム



 船舶の建造等納付金の免除を受けるための承諾書取引及び預託金証書取引に係る取得費用が消費税の課税仕入れに該当するか否かが争われた事件で、福岡高裁(西謙二裁判長)は原審と同様に、預託金証書取引は課税資産の譲渡等に該当しないが、承諾書取引は課税仕入れに該当すると判断して、原処分の一部を取り消した。

 この事件は、内航海運業等を営む法人が、新たに船舶を建造する際に海運組合に納付する建造等納付金の免除を受けるために必要な留保対象トン数使用承諾書を取得する取引、預託金預り証書を取得する費用が課税仕入れに該当するとして消費税等の申告をしたのが発端。

 これに対して原処分庁がいずれも課税仕入れには該当しないと否認してきたため、法人側が提訴してその取消しを求めたところ、鹿児島地裁が預託金証書取引は金銭債権の譲渡のため非課税取引となるが、承諾書取引は課税仕入れに該当すると認定して法人側の主張の一部を認容したため、原処分庁が原判決の取消しを求めて控訴していた事案である。

 この海運組合は、内航海運組合法に基づいて全国組織の海運組合は構成組合として設立された法人で、組合員が船舶を新たに建造等する際には船舶の対象トン数に応じた建設等納付金の納付が求められる。この建造等納付金の免除を受けるためには、留保対象トン数使用承諾書及び預託金預り証書の取得が求められる。そのため法人側は、各取引に係る取得費用はいずれも建造する船舶の営業権に該当するものと解釈したわけだ。

 控訴審は原判決を踏まえ、預託金証書取引は資産の譲渡等のうち預託金返還請求債権という金銭債権の譲渡(非課税取引)であるため、課税資産の譲渡等には該当しないと法人側の主張を斥けたが、承諾書取引は課税資産の譲渡等と裏腹の関係にある課税仕入れに該当すると指摘。結局、原判決と同様、承諾書取引を非課税取引であるとして行った課税処分に係る部分は違法と判示して、原処分庁側の控訴を斥けた。

(2012.03.22 福岡高裁判決、平成23年(行コ)第57号)