帳簿の不提示は保存していない場合に該当すると判示
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:06/03/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 税務調査時にトラブルが生じ納税者が帳簿の提示を拒んでくる場合があるが、消費税の調査が一般化するにつれ、この帳簿の不提示が大きな問題になっている。というのも、消費税は課税売上げに係る消費税から課税仕入れに係る消費税を控除して弾き出されるわけだが、課税サイドは帳簿を提示しなければ帳簿等を保存していないものと判断、課税売上げに係る消費税額を推計する一方で、仕入税額控除を0として更正してくるからだ。
 しかし、消費税の仕入税額控除の前提要件となる帳簿を提示しない場合も、帳簿書類等を保存していない場合に該当するのか否か、その解釈は未だ確定していない。
 そうした中、その解釈の是非が争われていた事件で、徳島地裁(松本久裁判長)はこのほど調査の際に帳簿を提示しないのは帳簿書類等を保存しない場合に該当すると判示、仕入税額控除を0とした原処分を妥当とする初めての注目すべき判決を下した。同地裁は、帳簿を保存していない場合とは単に帳簿書類等が事業の支配下にない場合だけでなく、適法な税務調査においてその提示・閲覧を求められた時に正当な理由なくこれに応じない場合も含まれると解釈、原処分庁の主張を受け入れ納税者の主張を斥けている。
 消費税法30条は、課税仕入れに係る消費税額の控除には帳簿書類等の保存が要件となることを定めているが、帳簿を提示しない場合については何ら規定をおいていない。条文の不明確さがもたらしたトラブルともいえる。現在、この事件と似た訴訟は10数件ほど提訴されており、後に続く訴訟に大きな影響を及ぼす判決となったのは否定できない。
 原告は控訴したが、一審時の主張に理論武装が全くなかったことが惜しまれる。
(1998.3.20徳島地裁判決、平成7年(行ウ)第8号)