仮名帳簿による仕入税額控除の訴訟で納税者また敗訴
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:08/18/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 仮名の仕入先による帳簿でも仕入税額控除が認められるか否かについて、初めての判決が昨年9月に東京地裁から下りたが、今年3月にも同様の事件に対する判決が下り、納税者の主張が全面的に斥けられた(富越和厚裁判長)。この事件も、やはり東京に本店がある医薬品の現金卸売業が原告。当初、取引の都合上、真実の名前を明らかにできない仕入先については仕入税額控除せずに申告したが、後日、仮名部分に係る仕入税額を再計算して還付請求したところ、原処分庁が否認したため訴訟に発展していたものだ。
 争点となっていたのは、仮名の帳簿でも法定帳簿に該当するか否か、また信義側違反を構成する否かの2点。このうち、仮名帳簿の正当性については課税仕入れの事実があれば、真実の名称の有無を問わず仕入税額控除を認めるべきであると主張するとともに、薬問屋における仮名仕入れは慣行化しており、真実の名称を明かせば仕入先を失うことにもなると反論。また、真実の名称を求めるのは規制緩和の流れにも逆行するものである他、消費税法には実名による帳簿の記載要件は付されていないことを指摘、真実性を求めるならば法律は住所地の記載を要件としたはずである、といった主張を繰り広げていた。
 しかし、判決は課税仕入れに関する正確・適正な消費税額の把握のためには真実の記載が求められると判示して納税者の主張を悉く否定。また、住所の記載については要件が過度になれば納税者に不利益を与える上、住所地によらずとも真実か否かの判断はできると示唆して、納税者の主張を全面的に斥けている。
(1998.3.27東京地裁判決、平成8年(行ウ)230号)