契約内容から公益法人を単なる名義人と認定、原処分を否定
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:04/17/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 温泉の利用料金等が公益法人、有限会社のいずれに帰属するかの判定を通じて、公益法人が消費税法13条の「単なる名義人」に該当するか否かの判定が争われていた事件で、広島地裁(坂本倫城裁判長)は契約内容からみて有限会社に利用料金等が帰属するため、公益法人は単なる名義人に過ぎないと判示、原処分庁が行った更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す旨の判決を下した。

 この事件は、温泉施設の管理運営を自治体から受託した公益法人がさらに有限法人に再委託する契約を交わしていたことが発端になったもの。その後、公益法人が収益事業開始届出書、消費税課税事業者届出書を提出したものの取下申請書も提出。翌年、一旦、消費税の確定申告書を提出した後、免税事業者であることを理由に更正の請求をしたところ、更正すべき理由がない旨の通知処分をしてきたため、その取消しを求めて審査請求の上、提訴していたという事案だ。つまり、公益法人は地方自治法違反を回避するための利用料金授受のトンネル会社、消費税法上は単なる名義人に過ぎないと主張していたわけだ。

 判決はまず、単なる名義人と法律上の真の資産の譲渡等を行った者がいると見られる場合は、仮に形式的には委託という法形式を用いている時でも、消基通4-1-3の契約内容、価格の決定経緯、最終的な帰属者等を総合的に考慮して真の私法上の法律関係を明らかにして真に資産の譲渡等を行った者を判定すべきという取扱いに沿って、真の法律上の帰属者を判定する必要があると指摘。その上で、委託契約の内容や事業運営の実態、経済的な財産の帰属等を総合して診断すると、私法上、真に資産の譲渡等を行ったのは公益法人ではなく有限法人であると認定、原処分を全面的に取り消す判決を下した。

(2006.06.18 広島地裁判決、平成16年(行ウ)第29号)