略称仕入れが一般的な浜取引の仕入税額控除を否認
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:12/29/1998  提供元:21C・TFフォーラム



 潜水漁業者から浜辺で直接魚介類を現金で仕入れる、いわゆる浜取引をめぐり消費税の仕入税額控除の可否が争われていた事件で、高松地裁(馬渕勉裁判長)は略称仕入れによる浜取引は消費税法施行令49条2項が定める「やむを得ない事情」には当たらないと判示、納税者が求めていた課税処分の取消請求を棄却した。
 この事件は、生鮮魚介類の仲買業を営む法人が魚介類を水揚げした浜辺で直接、潜水業者から現金で仕入れる浜取引を行った際に、取引期日・取引金額・取引先の略称を記載した判取帳の他に取引期日・金額・数量を記載したメモを保存。そのメモ類をもとに仕入税額控除を行って消費税の申告をしたことが発端になっている。これに対して、税務調査の際に課税サイドが略称では仕入先の特定ができないと指摘、仕入先名を明らかにするよう求めてきた。しかし、納税者サイドは今後の取引が不可能になることを理由に課税サイドの求めを拒否。そこで、課税サイドが仕入税額控除を否認、更正処分等をしてきたため、課税処分の取消しを求めて法人が訴訟を起こしていたという事案だ。
 納税者サイドは、浜取引は現金決済が慣習化していることをあげ、やむを得ない事情を主張して課税処分の取消しを求めていた。しかし、判決は帳簿等の保存に仕入税額の信頼性や正確性を担保するためにあると指摘。その上で、メモ等に記載された略称では消費税法が求める要件をクリアしていないと判示した。また、やむを得ない事情の有無についても取引の終了後に記載内容を補充することが可能であると認定、いずれの主張も失当と斥けた。業界の慣習といった点から影響も多く、多くの問題を抱えた判決ともいえる。
(1998.9.28 高松地裁判決、平成8年(行ウ)第1号