帳簿の後出しをめぐる争いで控訴審も原処分を支持
カテゴリ:03.消費税 裁決・判例
作成日:12/25/2000  提供元:21C・TFフォーラム



 消費税の仕入税額控除に係る「帳簿等を保存していない場合」の解釈が争われていた事件で、名古屋高裁(大内捷司裁判長)は税務職員の適法な帳簿等の提示要求に対してそれを拒否した場合は帳簿等を保存していない場合にあたると判示、納税者の控訴を斥けた。
 この事件は、消費税の調査の際に、納税者が税務職員に帳簿等の提示を拒否したことを受けて、原処分庁が帳簿等を保存していない場合にあたると認定して仕入税額控除を全額否認してきたため、その取消しを求めて提訴したものの一審で棄却されたことから、納税者が控訴して再度その取消しを求めていたという事案だ。
 しかし控訴審も、消費税法30条8項1号、9項1号が帳簿の記載事項を厳格に法定しているのは、帳簿の保存が事業者の仕入税額の管理というよりも、原処分庁による正確かつ迅速な申告内容の確認と効率的な税務調査の実現を主眼にしたものであると指摘。その考え方に立てば、消費税法30条7項が定める帳簿等の保存とは、納税者が主張するような単に物理的な保存では足りず、税務調査等のために税務職員から適法な提示要求がされた時には、これに直ちに応じることができる状態での保存を意味すると解するのが相当であるという解釈を示した。その結果、納税者が正当な理由なくその提示要求に応じなかった場合は、帳簿等の保存がないと事実上推定され、仕入税額控除は認められないと原審とほぼ同様の判示を行って、納税者の控訴を斥けて
いる。これに類似した事件は数件が係争中だが、控訴審の判決としてはこの判決がリーディング・ケースとなるものであり、今後も名古屋高裁と同様の判決が続くものと見られている。
(2000.3.24 名古屋高裁判決、平成10年(行コ)第32号)