租税回避目的でも国内に住所を有しているとの認定は困難
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:07/03/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 海外に居住している子供への海外子会社の株式の贈与に対して、贈与税の課税ができるか否かの判定が争われた事件で、東京地裁(鶴岡稔彦裁判長)は贈与した時点において子供は国内に居住していなかったと認定、原処分庁が納税者に行った贈与税額1160億円、無申告加算税170億円の決定処分等をすべて取り消す判決を下した。

 この事件は、消費者金融の経営者夫婦が保有していたオランダ籍の子会社株式を、香港に在住していた長男に贈与したことが発端になったもので、平成11年に贈与したことがポイントになっている。というのも、平成12年の税制改正までは、海外の資産を非居住者に贈与した場合、相続税・贈与税をできないことになっていたからだ。そのため、争点は株式が贈与された時点において、子供が居住者、非居住者のいずれであったか否かとい事実関係の判断が最大の争点になっていた。

 原処分庁側は子供が香港滞在期間中も4分の1以上は日本に滞在していた、子供の香港における業務には実態がなかった、さらに子供の資産はすべて日本に存在していたことなどの事実関係から、贈与を受けた子供の生活の本拠は日本であると認定、贈与税の決定処分は適法であると主張していた。

 これに対して判決は、将来日本に帰る予定があれば住所が日本にあるという原処分庁の見解は、住所に対する日本語の通常の意味内容から乖離していると批判。その上で、贈与税回避が目的であったことを考慮してもなお、原告が日本国内に住所すなわち生活の本拠を有していたと認定することは困難と判示、原処分庁側の主張を全て斥けている。この判決内容を不服として、原処分庁側は控訴している。

(2007.05.23 東京地裁判決、平成17年(行ウ)第396号)