錯誤を理由にした更正の請求も例外的に求められると判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:06/16/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 錯誤を理由にした遺産分割内容の変更による更正請求期間内の更正の請求、修正申告の可否が争われた事件で東京地裁(岩井伸晃裁判長)は、課税上の弊害がなく、申告納税制度の趣旨、信義則に反しない特段の事情がある場合は、遺産分割の錯誤を理由にした更正の請求も例外的に認められると判示、納税者の主張を全面的に認める判決を言い渡した。

 この事件は、相続した同族株式を配当還元方式による評価額を前提に第一次遺産分割をして相続税の申告をした後、その分割内容では類似業種比準方式による高額の税負担が生じることから、配当還元方式の適用ができるように各相続人の取得株式数を調整して新たに遺産分割をした上で、更正請求期間内に修正申告、更正の請求をしたことが発端。しかし、原処分庁が第一次遺産分割の内容に従って類似業種比準方式による評価をすべきと修正申告、更正の請求を否認してきたため、納税者側がその取消しを求めていた事案だ。

 判決はまず第一次遺産分割の私法上の効力を検討して、同族株式の分配に要素の錯誤があったと認定。その結果、更正請求期間内に1)調査時の指摘、修正申告の勧奨、更正処分の前に自ら誤信に気づいて更正の請求をし、2)新たな遺産分割の変更を行い、当初の遺産分割の経済的成果を完全に消失させ、かつ3)分割内容の変更がやむを得ない事情により誤信の内容を是正する一回的なものと認められる場合は、例外的に遺産分割の無効の主張も認められると指摘した。

 つまり、申告納税制度の趣旨や租税法上の信義則に反するとはいえないと認めるべき特段の事情がある場合は、錯誤を理由にした更正の請求も認められるという判断だ。遺産分割の錯誤無効を理由にした更正の請求は一蹴され続けてきただけに、実務的にも影響の大きい判決となった。しかも、国側が控訴を断念、一審で確定している。

(2009.02.27 東京地裁判決、平成19年(行ウ)第322号)