借地権の無償設定に伴う経済的利益は賃貸借の始期に発生
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:03/10/2009  提供元:21C・TFフォーラム



 審査請求人が出資の大半を有する有限会社が、請求人の父親から借地権の無償設定を受けたことに伴う経済的利益の発生時期が争われていた事案で、国税不服審判所は、出資者である請求人が利益を受けた時期は土地の賃貸借契約で定められた賃貸借の始期であると判断して請求人の主張を斥けたものの、原処分庁の決定額が審判所の認定額を上回っていたため、結果的に一部取消しの裁決となった。

 この事案は、審査請求人が出資の大半を有する有限会社が、請求人の父親から借地権の無償設定を受けたことに伴って出資の価額が増加したとして、その経済的利益を受けた請求人に対して贈与税の決定処分等を行ってきたため、経済的利益を得たのは決定処分が行われた前年であると反論、原処分の取消しを求めていたという事案だ。

 これに対して裁決は、民法601条に規定された賃貸借契約の定義を引き合いに、土地の賃貸借契約が成立した場合は、特段の事情がない限り、その契約成立の時に借地権の設定を受けたとみるのが相当であると解釈。その解釈に沿って事実関係を認定した上で、土地に係る賃貸借契約が成立したのは契約締結日と考えるのが相当であり、土地賃貸借契約書における賃貸借期間の開始の日に借地権が無償で設定されたということができ、その日が請求人が父親から贈与を受けたとみなされる日になると判断して、請求人の主張を斥けている。しかしながら、審判所が認定した贈与税の課税価格・納付税額が決定処分の額を下回ることから、結果的に一部取消しという裁決になった。

(国税不服審判所、2008.05.30裁決)