相続税評価額が「著しく低い価額」とはいえないと判示
カテゴリ:05.相続・贈与税 裁決・判例
作成日:10/30/2007  提供元:21C・TFフォーラム



 親子間の土地の売買に対する相続税法7条の適用の可否が争われた事件で、東京地裁(大門匡裁判長)は相続税評価額と同程度の価額かそれ以上の対価による譲渡の場合は著しく低い価額とは言えないと判示、納税者の主張を全面的に受け入れる判決を下した。

 この事件は、土地を取得した父親がその土地の持分を子供や妻に相続税評価額に基づく対価で譲渡・贈与したことに対して、処分行政庁が購入金額は相続税法7条の著しく低い価額の対価に当たるため時価との差額に相当する金額をみなし贈与と認定、贈与税の決定・更正をした上で無申告加算税・過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、納税者がその取消しを求めていたもの。

 父親は取得した土地を妻と子供が営む同族の有限会社に賃貸して相当の地代を得る一方、有限会社は建物部分を購入、父親が子供や妻に土地の持分を譲渡・贈与したという事案で、譲渡の際の売却価額が相続税評価額に基づく価額だったために、課税サイドは著しく低い価額に当たると判断、否認してきたという事案だ。

 これに対して判決は、相続税法7条の時価を相続税評価額と同視しなければならない理由はなく、時価とは常に客観的交換価値を意味すると指摘。その上で、著しいか否かの判定は個々の財産ごとの種類、性質、取引価額の決まり方、取引の実情等を勘案して行うべきであると解釈。その結果、公示価格の80%とされる相続税評価額による売買の対価については、土地取引の際の一つの指標になりえるとも示唆。その上で、相続税評価額と同程度の価額かそれ以上の対価で譲渡が行われた場合は、相続税法7条の著しく低い価額には当たらないと判示、国側の主張を斥けた。国側が控訴を断念したため、事件は一審で確定したものの、何故、国側が控訴をしなかったのか疑問を残したままの判決となった。

(2007.08.23 東京地裁判決、平成18年(行ウ)第562号)